『アトピー発症機序理論』確立のきっかけとなった患者さんの言葉

『アトピー発症機序理論』確立のきっかけとなった患者さんの言葉

2015年09月25日(金)10:00 AM

こんにちは、
皮膚科医 山本綾子です。

 

このサイトでは、ブログ形式で様々なテーマを織り交ぜながら、

皆さんに根治に役立つ知識をお伝えしています。

 

山本綾子の治療に深く関わる内容が多くなりますので、ご関心のある方は、

ぜひお読みいただき、私の治療方針や「アトピー発症機序理論」への

理解を少しでも深めていただければと思います。

 

 

 

さて今日は、現在私が提唱するアトピー根治のカギ「アトピー発症機序理論」

の研究と発見のきっかけのお話です。

 

私は過去の臨床実習で、ある一人の教授がアトピー患者さんに対し、熱心に

時間を惜しまずステロイドの使い方などを説明しているのを見てきました。

この教授は、医師としての技術はもちろん、大きな薫陶を受けた恩師でした。

 

これまで長い間、何人もの皮膚科医に診てもらっても、よくならなかった

患者さんたちが、たった1週間で劇的に改善する姿に感銘を受け、私も

このように、本当に患者さんのことを思い、しかも腕のいい皮膚科医になりたいと、

迷うことなくこの皮膚科学教室に入局。

 

念願のアトピー班となり、来る日も来る日もこの先生の治療方法を直接見て、

説明の仕方を聞きながら、ほぼ同じことができるまで、ステロイドを使いこなす

技術を磨きあげました。

 

そしてその技術をもって、行く先々の勤務病院でたくさんの患者さんを

1週間もあれば改善させてしまい、患者さんからも大変感謝されることで、

自分のアトピー治療に自信をもって毎日充実した診察を行ってきました。

 

 

ところが!・・・ところがです。

ある日、ある男性患者さんからこんなことを言われてしまいました。

 

この患者さんは、脱ステロイドで1年以上もほぼ寝たきりの生活を強いられて

いたのですが、私のステロイド治療でようやくきれいになり、普通の生活を

送れるようになった、つまり”ステロイドのおかげで助かった”患者さんでした。

 

 

「山本先生。先生の治療はたしかに素晴らしいです。

今日だって体中、ほとんど湿疹がない状態です。

 

でも、今はこんなにきれいなのに、あるとき急激に湿疹が湧いて出てくるのです。

 

それも、先生が言うような”かさかさした皮膚をひっかいてできる湿疹”ではなく、

突然、体の中から湧いてくるのです。

 

確かにその湿疹もステロイドを塗れば改善します。

先生は塗れば治るのだからいいじゃない、と言います。

 

 

でも、違うのです!

アトピーで何年も苦しんできた患者は塗って治ればそれでいいわけではないのです!

日々、突然湧いてくる湿疹におびえています。

また、ひどくなるのではないかと。

 

そして、そんな恐怖感がある間は、僕は前向きに生きられません。

生きてゆく希望が持てません。そして、そんな自分が好きになれません。

 

今の医療ではアトピーは根治が難しいとされています。

ということは、僕はこのアトピーから逃れることができないのでしょうか。

毎日毎日、湿疹が湧いてくる自分の体を呪いながら生きていくくらいなら、

死んだほうがましです!」

 

 

湿疹が出ても、ステロイドを塗ってきれいにできれば、生活の上では

支障がありませんから、それでもいいじゃないかと思っていた私にとっては

衝撃的な言葉でした。

 

ただ、皮膚をきれいにすれば患者さんたちが救われる訳ではなかったのです。

 

本当の意味でアトピーから解放され、患者さんが自分らしい生き方をできるように

なるには、「湿疹が湧いてくる恐怖」から解放される必要がある。

つまり、アトピーの根治が必要だということ。

 

患者さんたちの「どうせアトピーは根治できない病気だから」というあきらめの

気持ちがある限り、患者さんたちは本当の意味で「自分らしく生きる」ことが

できないと教えられました。

 

そして、この日を境に、アトピーの根治にむけて、たくさんの患者さんたちとともに

本気で研究を開始しました。

 

このように、私の研究とその成果は、患者さんの言葉から始まったと言っても

過言ではありません。

 

 



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